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「旅行先で薬がなくなってしまった!」旅行・災害時の薬の備えとよくあるケースを薬剤師が解説

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尾崎 拓也(薬剤師・調剤薬局経営者)が執筆・監修
和歌山県内で調剤薬局を経営。本記事は現役薬剤師としての実務経験と公的資料に基づいています。 プロフィールはこちら

「旅行先に到着してスーツケースを開けたら、いつも飲んでいる血圧の薬を持ってきていなかった」「地震で自宅が被災し、薬の入った引き出しに近づけなくなった」——旅行中や災害時に薬が手元にない状況は、慢性疾患の方にとって特に不安なものです。こうした場面での対処法を、薬局でよくあるケースをもとに薬剤師が解説します。

※ この事例は、薬局でよくあるケースをもとに再構成した一般的な例であり、特定の実話ではありません。薬の取り扱いは処方医・薬剤師にご確認ください(2026年7月時点の情報をもとにしています)。
📋 この記事でわかること
  • 旅行先で薬が切れてしまったときの現実的な対処法
  • 「お薬情報提供書」「お薬手帳」が旅先でどう役立つか
  • 旅行前に薬局でやっておくと安心なこと
  • 災害・緊急時に薬を継続するための日頃の備え方

よくあるケース:旅行先で降圧剤を忘れてきた

田中さん(72歳)は毎朝欠かさず降圧剤(カルシウム拮抗薬)を服用しています。夏休みに家族旅行で遠方に出かけ、旅館に到着した夜に薬を自宅に置いてきてしまったことに気づきました。「2泊3日だから1日くらい飲まなくてもいいか」と思いながらも、翌朝の血圧が気になり旅館のフロントに相談しました。

フロントから地元の薬局を紹介してもらいましたが、薬剤師に状況を伝えると「処方薬なので処方箋なしにお渡しすることはできません。近くの内科を受診していただく必要があります」と説明されました。翌朝に旅行先の内科を受診し、かかりつけ医から処方されている薬の名前・用量を電話で確認したうえで処方してもらうことができました。ただ、受診に半日かかってしまい、観光の予定は大幅に変わることに。

何が起きていたか——「処方薬は処方箋なしでは出せない」という原則

日本では、処方薬(医療用医薬品)を薬局が調剤するためには有効な処方箋が必要です。旅行先でいつもの薬がなくなっても、薬局が善意で薬を渡すことは法律上できません(薬機法上の例外規定は限定的です)。

旅行先で薬を継続するための現実的な方法は、旅行先の医療機関を受診して処方してもらうことです。このとき、お薬手帳や「お薬情報提供書」があると、薬の名前・用量を正確に医師に伝えられ、スムーズに処方を受けやすくなります。

💡 旅行先で薬が切れたときの選択肢
薬が手元にない 旅行先で気づいた → 旅行先の 内科を受診 お薬手帳を持参 → 処方箋を受け取り 旅行先の薬局で 調剤 → 服薬継続 薬代は後日 かかりつけに報告

※ 旅行先での受診は健康保険が使えます。受診費用・薬代は保険適用。処方内容はかかりつけ医にも必ず報告しましょう。

薬剤師の解説①:旅行前にやっておくと安心なこと

事前準備 ポイント
お薬手帳(紙または電子版)を必ず持参薬の名前・用量・飲み方が一目でわかる。旅行先の医師や薬剤師にも共有しやすい
薬を多めに持参する日数分 + 2〜3日の予備が目安。旅行期間に合わせた処方調整が必要な場合は主治医に事前相談
「お薬情報提供書」をもらっておくかかりつけ薬局に「旅行に行くので薬の情報をまとめた書類をください」と頼むと用意してもらえる
薬は機内持込バッグ・手荷物に入れるチェックインバッグに入れると紛失・遅延のリスクあり。薬は手荷物として管理するのが基本
「お薬情報提供書」とは?
かかりつけ薬局が発行できる、服用している薬の一覧・用量・アレルギー情報などをまとめた書類です。旅行先の医師に見せると、薬の確認がスムーズになります。「旅行に行くのでまとめた書類をください」とひと声かけるだけで準備してもらえます。

薬剤師の解説②:「旅行分まとめて処方できますか?」と聞いていいの?

「旅行があるから2週間多めに処方してほしい」と主治医にお願いしたい気持ちはよくわかります。ただし、保険診療では「医学的に必要な日数」を超えた処方は原則として認められていません。

状況 対応
国内旅行(1〜2週間程度)次回受診日をずらすか、前倒しで受診して旅行期間分をカバーするのが現実的
海外長期滞在(1か月以上)主治医・薬剤師に事前相談。処方期間の延長が可能か、現地での薬の入手方法も確認
旅行中に次回受診日が来る早めに受診するか、電話・オンライン診療で対応を相談(対応している医療機関の場合)

薬剤師の解説③:災害時に薬を継続するための日頃の備え

旅行だけでなく、地震・水害などの災害時にも薬が手元にない状況は起こりえます。「避難したら薬棚に近づけなかった」「避難袋に薬を入れ忘れた」というケースも珍しくありません。

🏠 日頃からやっておきたい備え(慢性疾患のある方)
  • 1週間分の予備薬を常に確保しておく——処方が切れる前にひと箱多めにストックする習慣をつける
  • お薬手帳(または写真)を防災袋に入れておく——電子版ならクラウドにデータが残り、スマホ1台あれば確認できる
  • 薬の名前・用量をメモに書いて財布に入れておく——お薬手帳が手元になくても最低限の情報を伝えられる
  • 自治体・薬局の「お薬相談・処方継続窓口」を確認しておく——大規模災害時に都道府県が設置する薬の相談窓口が役立つ
⚠️ 絶対に1〜2日で急に飲んではいけないわけではない薬もある——でも自己判断は避けて

血圧の薬・心臓の薬・抗てんかん薬・糖尿病の薬など、急に服用をやめると体調に影響が出る薬があります。「旅行先で薬を切らしてしまった」「災害で薬が手に入らない」という場合も、独断で中止せず、まず近くの医療機関や薬局に相談することが最優先です。

よくある疑問Q&A

Q. 旅行先の薬局で「市販薬と同じ成分だから」と売ってもらえることはある?

ケースによっては、処方薬と同成分・近い成分のOTC薬(市販薬)が存在する場合があります(例:ロキソプロフェン・ビタミン剤など)。ただし、処方薬と市販薬では用量・規格が異なることが多く、慢性疾患の薬(降圧剤・抗血栓薬・糖尿病薬など)には対応するOTC薬が存在しないものがほとんどです。薬剤師に「同成分の市販薬がありますか」と確認することはできますが、処方薬の代替としての使用は医師・薬剤師に相談が必要です。

Q. 海外旅行中に薬が切れたら?

海外では日本の処方箋は使えません。現地で受診する、または渡航前に旅行期間分の薬を十分に持っていくことが基本です。長期滞在の場合は主治医に事前相談のうえ、英語版の薬の情報書(英文お薬情報提供書)を作成してもらうと、現地医師に薬の情報を伝えやすくなります。海外旅行保険のキャッシュレス受診も活用できる場合があります。

Q. 緊急で薬が必要なとき、夜間休日でも薬をもらえる?

休日・夜間急病診療所や救急外来を受診すれば、緊急性が高いと判断された場合は処方を受けられることがあります。ただしすべての薬が対応できるわけではなく、かかりつけの薬の情報(お薬手帳)があると受診がスムーズです。地域の「救急・夜間医療機関」は旅行前に調べておくと安心です。

📮 まとめ:旅行・災害に備えた「薬の安全網」を整えておこう
  • 旅行前にお薬手帳・お薬情報提供書・予備薬を準備する——「忘れたときの保険」としても機能する
  • 旅行先で薬が切れても、薬局だけでは処方薬は出せない——旅行先の医療機関を受診して処方箋をもらうのが原則
  • 災害時のために1週間分の予備薬とお薬手帳のバックアップを習慣にする——電子版お薬手帳はクラウドで情報が守られる
  • 1〜2日飲めない場合の対応は薬の種類によって異なる——自己判断で中止せず、必ず医療機関や薬剤師に相談を
旅行前に「お薬手帳、持った?」と確認するのと同じように、かかりつけ薬局への一声も忘れずに。
「旅行に行くので予備をもう少し多めにもらえますか?」「お薬情報提供書をもらいたい」——そんな相談は薬局では日常茶飯事です。旅行シーズン前に、ぜひかかりつけの薬剤師に声をかけてみてください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療・服薬指導の代替となるものではありません。体調や薬について気になることがあれば、医師・薬剤師にご相談ください。制度・金額は公開時点の情報に基づきます。詳しくは利用規約・免責事項をご覧ください。

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