「複数の病院で薬が重なっていた」重複投薬に薬剤師が気づいたよくあるケースと「重複投薬・相互作用等防止加算」のしくみを解説
「内科でもらっている薬と、整形外科でもらっている薬が重なっているんじゃないか」「処方箋を持っていったら薬剤師さんに『念のため先生に確認します』と言われた。何が問題だったの?」——複数の医療機関を受診している方からよく聞かれる疑問です。薬局で「重複投薬・相互作用等防止加算」が明細書に載っていて気になったという声も増えています。今回は、薬局でよくあるケースをもとにこのしくみを薬剤師が解説します。
- 複数の病院で薬をもらうと起きやすい「重複投薬」のリスク
- 「重複投薬・相互作用等防止加算」とは何か・算定されるのはどんなとき
- 薬剤師が処方医に照会して処方が変わるまでの流れ
- 重複・飲み合わせを防ぐために患者側でできること
よくあるケース:内科と整形外科から似た成分の薬が出ていた
山内さん(67歳)は高血圧の治療で内科に通い、半年前から腰痛で整形外科にも通い始めました。両方の処方箋をかかりつけ薬局に持っていくことも多かったのですが、ある日「今日は整形外科だけ」と整形外科の処方箋のみを持参しました。
薬剤師が処方内容と薬剤服用歴(お薬手帳)を確認したところ、内科で処方されていた「エナラプリル(ACE阻害薬)」に加えて、整形外科から新たに「ケトプロフェン(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)」が処方されていることに気づきました。
「ACE阻害薬とNSAIDsを一緒に長期服用すると腎機能に影響が出ることがある」——薬剤師はこの組み合わせを問題と判断し、整形外科の医師に電話で確認を取りました。結果、腰痛の治療薬を腎臓への影響が少ない別系統の薬に変更してもらうことができました。
何が起きていたか——「飲み合わせ」の問題と薬局の役割
山内さんのケースで起きていたのは「相互作用(飲み合わせ)」の問題です。複数の医療機関から薬が出ている場合、それぞれの医師は「自分が処方した薬」の範囲で安全性を確認しますが、他院の処方まではすべて把握しきれないことがあります。
薬局はすべての処方箋を一か所で管理できるため、こうした飲み合わせや重複を発見できる最後の砦としての役割を担っています。
※ 重複・相互作用を発見・処方医へ照会・変更に至った場合、「重複投薬・相互作用等防止加算」が算定されます。
「重複投薬・相互作用等防止加算」とは何か
薬剤師が処方内容を確認し、薬学的観点から問題を発見して処方医に照会した結果、処方の変更または中止につながった場合に算定できる加算です。処方箋の受付・調剤時に算定されます。
| 加算の種類 | 内容 | 算定点数(目安) |
|---|---|---|
| 重複投薬等防止加算(残薬調整以外) | 重複・相互作用の問題を発見し照会・処方変更に至った場合 | 40点(3割負担で約120円) |
| 重複投薬等防止加算(残薬調整) | 残薬確認から重複発見・処方変更に至った場合 | 30点(3割負担で約90円) |
薬剤師が問題に気づいて照会しても、処方医が「このまま続けて大丈夫」と判断した場合は加算は算定されません。あくまで「照会の結果、処方が変更・中止になった場合」に限り算定できます。明細書に載っていたときは、薬剤師が患者さんのために積極的に動いた証拠とも言えます。
読者へのアドバイス:重複投薬・飲み合わせを防ぐためにできること
- お薬手帳は必ず持参・提示する——スマートフォンの電子お薬手帳でもOK。他院の処方情報を薬剤師が確認できると安全性のチェックがしやすくなります
- 複数の病院を受診していることを薬剤師に伝える——「内科と整形外科に通っています」のひと言で、薬剤師がより注意深く確認します
- 市販薬やサプリメントも伝える——処方薬と市販薬(NSAIDsなど解熱鎮痛薬等)や健康食品の組み合わせも相互作用の原因になりえます
- かかりつけ薬局を一本化する——すべての処方を1か所の薬局に集めると、薬歴が一元管理されて重複・飲み合わせの発見率が高まります
複数の医療機関を受診しているほど、重複投薬や飲み合わせのリスクが高まります。薬剤師が照会・処方変更につなげた場合にのみ算定されるこの加算は、薬代が少し増える場面でもありますが、安全な薬物療法のために薬剤師が動いた結果でもあります。お薬手帳の提示と「かかりつけ薬局」の一本化が、最も効果的な予防策です。